2006年05月07日

第134回 キケン!日米原子力パートナーシップ

高速炉「常陽」というのが気になるが、分からないことが多い、というようなことを書いている途中でした。新聞に、高速炉「もんじゅ」「常陽」の活用で日米合意、と。びっくりです。(読売新聞だけは「常陽」という名前を出していませんでした。)

これはいわゆる国際原子力パートナーシップ(GNEP)構想に基づく協定のようです。
以前からGNEPは怪しげだったのですが、今回は「高速炉」にこだわっています。

最初に言ってしまうと、これは核エネルギー協調構想という名を借りた核兵器共同開発・生産構想なのではないのでしょうか。

高速炉で生産する軍用プルトニウムはとても純度が高く、高性能原爆の原料になると考えられています。

しかし日本の「もんじゅ」やフランスの「スーパーフェニックス」など、各国で高速増殖炉は開発されてきましたが、どれも事故などでストップしています。

これは想像ですが、アメリカは高速炉による軍用プルトニウム生産を共同生産するとして、最もコスト(環境負荷も含む)とリスクの高い部分を日本に押しつけ、やがて核の傘を日本から外し、アメリカの監視下で日本に核武装させる、といった構想を持っているのではないでしょうか。(追記:核の傘を外すという箇所からは槌田氏の論文に基づく)

プルトニウム原爆には核実験が必須です。さすがに日本国内で核実験はできない。しかしこれはアメリカで行うのではないでしょうか。

GNEPでは「兵器に転用されにくい核燃料サイクル」の開発を標榜しています。これはたいへん怪しいものです。なぜならそれは基本的に、プルトニウムを必要以上に濃縮しない、純粋に取り出せないような不純物を混ぜる、特に強い放射線を出す扱いにくいものにする、といったようなことなのです。

しかし結局は「核燃料」として使うものなのです。これを高速炉の燃料に使えば軍用プルトニウムが作れるわけです。

六ヶ所再処理工場はもともと「もんじゅ」を軸とする“核燃料サイクル”構想で造られたのですから、ここで抽出されたプルトニウムが高速炉で使えない設計である筈がありません。

高速炉「もんじゅ」も「常陽」も燃料はMOX(プルトニウムとウランの混合燃料)です。(比率などは違うと思いますが)

核分裂反応を起こすMOX燃料の周囲を囲うようにウラン238(劣化ウラン)を置きます(ブランケット燃料)。するとそれに核反応から出る高速中性子が照射されプルトニウム239ができます。これが非常に純粋で兵器用プルトニウムになると言われています。

高速炉が純粋なプルトニウムを作るというのは、前回も書きましたが、そのようにMOXから間接的に作るわけです。

つまりどんなに不純物の多いプルトニウムでも、それが核燃料としてあるのなら、「高速炉」さえあれば兵器用プルトニウムが製造できることになる。だから「兵器に転用されにくい核燃料サイクル」といっても「高速炉」の存在があれば無意味なのではないでしょうか。濃縮技術とか分離技術の有無とか可否は問題にならないと思います。

だから「高速炉の活用で日米合意」というのは限りなくあやしい。

しかも高速炉で作り出す高品質プルトニウムによってこそ、小型戦略核兵器=「使える核」を造ることができる。アメリカが作りたいのはこれでしょう?

ところで、「常陽」というのが、これがやっぱりよくわかりません。軍用プルトニウムをどのくらいの能力で作ることができるのか?

変なことを言いますが、チョー危険!な「もんじゅ」を動かしてプルトニウムを生産するより、比較的安全な「常陽」で生産すればよいではないか、という、ちょっと倒錯気味のことも言いたくなるわけです。

よく分かりませんが、「もんじゅ」は、IAEAや、日本人を含め世界の監視下で、必死に核保有への抜け道を手繰っているように感じるのですが、どうでしょうか?


核開発については分からない部分がとても多く、これまであまり書いてきませんでした。

前回の第133回 「核武装」の条件である「再処理」について、読者の方から指摘を受けました。

軽水炉の使用済み燃料から再処理して取り出したプルトニウムはそのままでは純度が低くて使えない、という槌田論文に基づく記述なのですが、これは不正確で、軽水炉でも早期に取り出せば、少量ながら純粋な軍用プルトニウムが抽出できるということでした。

軽水炉の中では燃料中のウラン238が中性子を捕獲して(追記:もっと複雑な過程を経る)プルトニウム239になっていくのですが、長時間それが続くと高次のアイソトープ、つまりプルトニウム240とか241、242、などになってゆく。ようするに不純物が増えていくということです。

高次のアイソトープが増えていく前に燃料を取り出して再処理すると、とても少量だが純粋なプルトニウム239が取り出せる。ただしこれを利用して核兵器を作った歴史があるのかどうかは不明です。

しかしこの場合もやっぱり「再処理」という工程は不可欠なわけです。

「再処理」なしに「核保有」なし。この定義は間違いないでしょうか?

あらためてはっきりしておきますが、「再処理」というのは、原子炉で使っていた燃料を取り出して使えるプルトニウムやウランを抽出することです。しかし日本の場合、ウラン235(燃料になるウラン)は再利用しません。不純物が多いからだそうです。

■トラックバックをお送りしました。
http://ameblo.jp/nyaonnyaon/entry-10012152876.html
http://blog.livedoor.jp/roseshield/archives/50606781.html
http://blog.livedoor.jp/memejapan/archives/50533168.html


朝日新聞 2006年05月06日13時14分

高速炉「もんじゅ」「常陽」の活用で日米合意

 訪米中の小坂文部科学相は5日、米エネルギー省のボドマン長官と会談し、日本の高速増殖原型炉「もんじゅ」や同実験炉「常陽」を活用して新型核燃料を開発するなど、新しい核燃料サイクルの研究開発の協力を進めることで合意した。日米は、核不拡散体制の再構築を図り、エネルギーの有効利用を目指すことで足並みをそろえた。

 ブッシュ政権が2月に発表した原子力新計画「国際原子力パートナーシップ」に基づくもので、協力するのは(1)新型核燃料開発(2)米国内での核燃料サイクル施設の設計(3)原子炉の小型化のための材料開発(4)新型高速炉用の機器の開発(5)核兵器転用を防ぐ新たな保障措置システムの構築――の5分野。日本側が提案し、米側が了承した。

 米国は新計画で核兵器転用の恐れが少ない新たな核燃料サイクルの実現を目指す。日本、フランス、英国、ロシア、中国などと協力する考えだ。

 米国は77年以来、核拡散の恐れがあるとして国内での民生用の再処理と高速炉開発を「無期限凍結」してきたため、新技術開発に必要な試験施設などが手薄だ。米エネルギー省は、「もんじゅ」「常陽」について、「新計画を進める上で極めて重要」などと強い関心を表明していた。こうした米国の意向を受け、今回、日本側が提案した。

 「もんじゅ」は95年のナトリウム漏れで運転を停止。現在、改造工事中で、08年初めの運転再開を目指している。


senza_fine at 19:37 │TrackBack(0)原子力ミニコラム 

トラックバックURL

カテゴリー
月別アーカイヴ
最新記事
Thank You, TB
コメントありがとう
永田達三は燃えているか (大きく括れば同期生?)
永田達三は燃えているか (NobuoKasai(管理人))
永田達三は燃えているか (川越校その2)
永田達三は燃えているか (川越校永田支局)
未来少年コナン (コナン好き)
永田達三は燃えているか (Kasai(管理人))
永田達三は燃えているか (通りすがりの者)
地方新聞の重箱

道北日報 士別市
名寄新聞 名寄市
留萌新聞
留萌市  
オホーツク新聞 紋別市  
北海民友新聞 紋別市
ななかまど新聞 石狩市  
北海道新聞社
札幌市  
札幌タイムス 札幌市  
室蘭民報 室蘭市
苫小牧民報社
苫小牧市  
十勝毎日新聞 帯広市  
くしろ新聞社 釧路市  
函館新聞社 函館市  
東奥日報社 青森市  
陸奥新報社 弘前市  
デイリー東北新聞社 八戸市  
秋田魁新報社 秋田市  
北羽新報 能代市  
秋田県南日々新聞 大曲市  
あきた北新聞社 大館市  
北鹿新聞社 大館市  
岩手日報社 盛岡市
盛岡タイムス 盛岡市 
岩手日日新聞社 一関市  
東海新報社 大船渡市  
胆江日日新聞社 水沢市  
山形新聞社 山形市  
河北新報社 仙台市  
福島民報社 福島市  
福島民友新聞 福島市  
夕刊いわき民報 いわき市  
柏崎日報社 柏崎市  
新潟日報社 新潟市  
北日本新聞社 富山市  
富山新聞社 富山市  
北國新聞社 金沢市  
北陸中日新聞 福井市  
日刊県民福井 福井市  
福井新聞社 福井市  
下野新聞社 宇都宮市  
桐生タイムス 桐生市  
上毛新聞社 前橋市  
群馬経済新聞 前橋市  
常陽新聞 土浦市  
茨城新聞社 水戸市  
埼玉新聞社 さいたま市  
日刊文化新聞 飯能市  
千葉日報社 千葉市  
房日新聞社 館山市  
小笠原新聞 小笠原村  
南海タイムス 八丈町  
神奈川新聞社 横浜市  
日刊相模経済新聞 相模原市  
山梨日日新聞社 甲府市  
信濃毎日新聞社 長野市  
南信州新聞 飯田市  
市民タイムス 松本市  
長野日報 諏訪市  
静岡新聞社 静岡市  
中部経済新聞社 名古屋市  
とうめい新聞社 瀬戸市  
中日新聞社 名古屋市  
岐阜新聞社 岐阜市  
伊勢新聞社 津市  
奈良新聞 奈良市  
滋賀報知新聞 大津市  
京都新聞社 京都市  
両丹日日新聞社 福知山市  
大阪新聞 大阪市  
大阪日日新聞 大阪市  
紀伊民報社 田辺市  
紀州新聞 御坊市  
南紀州新聞 新宮・勝浦市  
神戸新聞社 神戸市  
岡山日日新聞 岡山市  
山陽新聞社 岡山市  
中国新聞社 広島市  
新日本海新聞 鳥取市  
山陰中央新報社 松江市  
島根日日新聞 出雲市  
防長新聞 岩国市
大陽新聞 福山市
日刊周南新聞 周南市  
防府日報 防府市  
ウベニチ新聞社 宇部市  
宇部時報社 宇部市
長周新聞 下関市
山口新聞 下関市
四国新聞社 高松市  
徳島新聞社 徳島市  
高知新聞社 高知市  
愛媛新聞社 松山市
西日本新聞 福岡市  
有明新報社 大牟田市  
大分合同新聞社 大分市  
佐賀新聞社 佐賀市  
長崎新聞社 長崎市
壱岐日々新聞 壱岐市  
熊本日日新聞社 熊本市  
宮崎日日新聞社 宮崎市  
南日本新聞社 鹿児島市  
人吉新聞 人吉市  
南海日日新聞 名瀬市  
沖縄タイムス社 那覇市  
琉球新報社 那覇市  
宮古毎日新聞社 平良市
八重山毎日新聞社 石垣市

Profile
Nobuo Kasai
n_kasai@tc5.so-net.ne.jp
1970年生まれ
東京在住
記事に関してお気づきの点がございましたら,メールをいただけると幸いです。ただしお返事には時間がかかることがあります。
 
senza fine とはイタリア語で,without end という意味です。ジャック・リヴェットの映画「恋ごころ」で流れてくるペギー・リーの歌のタイトルでもあります。ここで聴けますよ。