2008年01月13日

プルトニウム発電に関するデマ広告

読売新聞 080111

1月11日の読売新聞に「サイクルクル物語」という絵本仕立ての「プルサーマル」の一面広告が出ていました。(翌日には高レベル核廃棄物を地下に埋める会社「NUMO」の一面広告が出ていました。)

以下が「サイクルクル物語」の内容です。

ウラン資源をリサイクルできる「プルサーマル」。資源小国である日本の重要な事業計画です。

原子力発電で使い終わった燃料に含まれている燃え残りのウランや新たに生成されたプルトニウム。それらを混ぜ合わせると、再び原子力発電所で燃料として活用できるMOX燃料ができあがります。「プルサーマル」とは、そのMOX燃料を使って発電すること。これまで、フランスをはじめ、ドイツ、ベルギーなどの50基以上の原子力発電所で利用されており、実績も豊富です。「プルサーマル」は、石油などの化石燃料の節約や高レベル放射性廃棄物の量を減らすなど、さまざまなメリットをもたらします。ウラン資源を最大限に有効活用できる「原子燃料サイクル」を進める上で、大きな役割を担う「プルサーマル」。それは将来にわたるエネルギー資源の安定確保を可能にし、日本のエネルギー自給率の向上に大きく貢献していくものなのです。

エネルギーの安定供給と地球環境保護のため、「原子燃料サイクル」を推進しています。

<まんが部分>
1.ウラン資源を繰り返し使える、プルサーマルって知っていました?

2.原子力発電所で使い終わった燃料の中には実はまだまだ使えるウランとプルトニウムが残っているんだ。

3.それをリサイクルしたのがMOX燃料。この燃料を使って原子力発電所を動かすことをプルサーマルというんだよ。

4.ウラン資源をリサイクルできるってことは、資源をながーくながーく使えるってことなんだ。

「プルサーマル」は、仕組みと、そこに至るいきさつが実に複雑難解なのですが、この広告を踏まえ重要なポイントだけは押さえておきたいと思います。

まず、「プルサーマル」という言葉ですが、これは日本の原子力業界の造語であり、「プルトニウム発電」というほうが比較的正確です。

ウラン燃料を使う原子炉に規格外の燃料であるプルトニウムを使わなくてはいけなくなったのは、原子力計画の破綻であり、原子力行政の失敗なのです。

ヨーロッパのいくつかの国はプルトニウム発電を行っています(いました)。広告はそれを「実績」などと言っていますが、それらはみんな同じ失敗を犯した、「悪い見本」なのです。

もっとも、最大の煽動役は日本、そして西ドイツでした。「悪い見本」なんて言っちゃ叱られます。

もう一つ、「プルサーマルは……高レベル放射性廃棄物の量を減らせる……などのメリットをもたらします」とあるのですが、こういう表現は初めて見たような気がします。

「高レベル放射性廃棄物」というのは日本では、核燃料を再処理したときの廃棄物(ガラス固化体)のことのみを指すことになっています。(そのように仕組まれた)

だから、プルトニウム発電を行わなければ「高レベル放射性廃棄物」は出ません。「量を減らす」というのは何をいっているのかわかりません。ここまではっきりと書かれると虚を衝かれた気持ちになります。

「核燃料サイクル」も「原子燃料サイクル」に変えられています。

もう一つ。「使用済み燃料にはウランとプルトニウムが残っていて、それをリサイクルしたのがMOX燃料」と書かれています。しかし、微妙ですが、燃えるウラン=ウラン235に関してはリサイクルしません。

「プルサーマル」で節約できるウランは1〜2割と言われています。(電力会社もそのように言っています)どっちにしろ少ないですが、それでも1割と2割では倍も違います。

これは、ウラン235も回収した場合、2割の節約ができるという計算が成立しているのだと思います。

しかし、再処理で回収されたウラン235は特性が違うため使えません。(参照)ですから実際には、最大でも1割しか節約されません。(追記:回収ウランについてはここも参照してください。)

したがって日本のエネルギー自給率の向上にはほとんど貢献しません。

そして肝心なことは、MOX燃料は一度使ったら終わりです。「くり返し」使えません。ただし100年たって温度が下がればもう一度再処理できるかもしれません。(参照

最大の嘘は、「地球環境保護のため」という部分でしょう。

前回書いたように、一般のウラン燃料の製造過程だけでも環境汚染は計り知れないのです。プルトニウム燃料製造過程では、それに加え、空に、海に、膨大な放射性物質を放出します。まったく正反対の内容です。

こんなデマ広告はJAROに訴えるべきではないでしょうか。


senza_fine at 23:57 │TrackBack(0)原子力ミニコラム第2巻 

トラックバックURL

カテゴリー
月別アーカイヴ
最新記事
Thank You, TB
コメントありがとう
永田達三は燃えているか (大きく括れば同期生?)
永田達三は燃えているか (NobuoKasai(管理人))
永田達三は燃えているか (川越校その2)
永田達三は燃えているか (川越校永田支局)
未来少年コナン (コナン好き)
永田達三は燃えているか (Kasai(管理人))
永田達三は燃えているか (通りすがりの者)
地方新聞の重箱

道北日報 士別市
名寄新聞 名寄市
留萌新聞
留萌市  
オホーツク新聞 紋別市  
北海民友新聞 紋別市
ななかまど新聞 石狩市  
北海道新聞社
札幌市  
札幌タイムス 札幌市  
室蘭民報 室蘭市
苫小牧民報社
苫小牧市  
十勝毎日新聞 帯広市  
くしろ新聞社 釧路市  
函館新聞社 函館市  
東奥日報社 青森市  
陸奥新報社 弘前市  
デイリー東北新聞社 八戸市  
秋田魁新報社 秋田市  
北羽新報 能代市  
秋田県南日々新聞 大曲市  
あきた北新聞社 大館市  
北鹿新聞社 大館市  
岩手日報社 盛岡市
盛岡タイムス 盛岡市 
岩手日日新聞社 一関市  
東海新報社 大船渡市  
胆江日日新聞社 水沢市  
山形新聞社 山形市  
河北新報社 仙台市  
福島民報社 福島市  
福島民友新聞 福島市  
夕刊いわき民報 いわき市  
柏崎日報社 柏崎市  
新潟日報社 新潟市  
北日本新聞社 富山市  
富山新聞社 富山市  
北國新聞社 金沢市  
北陸中日新聞 福井市  
日刊県民福井 福井市  
福井新聞社 福井市  
下野新聞社 宇都宮市  
桐生タイムス 桐生市  
上毛新聞社 前橋市  
群馬経済新聞 前橋市  
常陽新聞 土浦市  
茨城新聞社 水戸市  
埼玉新聞社 さいたま市  
日刊文化新聞 飯能市  
千葉日報社 千葉市  
房日新聞社 館山市  
小笠原新聞 小笠原村  
南海タイムス 八丈町  
神奈川新聞社 横浜市  
日刊相模経済新聞 相模原市  
山梨日日新聞社 甲府市  
信濃毎日新聞社 長野市  
南信州新聞 飯田市  
市民タイムス 松本市  
長野日報 諏訪市  
静岡新聞社 静岡市  
中部経済新聞社 名古屋市  
とうめい新聞社 瀬戸市  
中日新聞社 名古屋市  
岐阜新聞社 岐阜市  
伊勢新聞社 津市  
奈良新聞 奈良市  
滋賀報知新聞 大津市  
京都新聞社 京都市  
両丹日日新聞社 福知山市  
大阪新聞 大阪市  
大阪日日新聞 大阪市  
紀伊民報社 田辺市  
紀州新聞 御坊市  
南紀州新聞 新宮・勝浦市  
神戸新聞社 神戸市  
岡山日日新聞 岡山市  
山陽新聞社 岡山市  
中国新聞社 広島市  
新日本海新聞 鳥取市  
山陰中央新報社 松江市  
島根日日新聞 出雲市  
防長新聞 岩国市
大陽新聞 福山市
日刊周南新聞 周南市  
防府日報 防府市  
ウベニチ新聞社 宇部市  
宇部時報社 宇部市
長周新聞 下関市
山口新聞 下関市
四国新聞社 高松市  
徳島新聞社 徳島市  
高知新聞社 高知市  
愛媛新聞社 松山市
西日本新聞 福岡市  
有明新報社 大牟田市  
大分合同新聞社 大分市  
佐賀新聞社 佐賀市  
長崎新聞社 長崎市
壱岐日々新聞 壱岐市  
熊本日日新聞社 熊本市  
宮崎日日新聞社 宮崎市  
南日本新聞社 鹿児島市  
人吉新聞 人吉市  
南海日日新聞 名瀬市  
沖縄タイムス社 那覇市  
琉球新報社 那覇市  
宮古毎日新聞社 平良市
八重山毎日新聞社 石垣市

Profile
Nobuo Kasai
n_kasai@tc5.so-net.ne.jp
1970年生まれ
東京在住
記事に関してお気づきの点がございましたら,メールをいただけると幸いです。ただしお返事には時間がかかることがあります。
 
senza fine とはイタリア語で,without end という意味です。ジャック・リヴェットの映画「恋ごころ」で流れてくるペギー・リーの歌のタイトルでもあります。ここで聴けますよ。