2008年05月09日
ヒューイット、バッハ、ペダル、FAZIOLI
カナダの女性ピアニスト、アンジェラ・ヒューイットはバッハを得意としています。行けませんでしたが、先日の来日コンサートでは、2夜にわたり平均率の第1巻と2巻を全曲演奏したそうです。
平均率を全曲演奏会で弾くなんて、とんでもなく恐ろしいプログラムです! かつてはあり得なかったと思う。
いや、きっとすばらしいのでしょうけど。けっして退屈することはないのでしょうけど。(彼女のウェブサイトによると、なんと東京オペラシティでもピアノはFAZIOLIだった!!)
かつてはタブーだった「バッハをピアノで演奏すること」を、改造に改造を重ねた中古スタインウェイを使い、スタジオにこもり続けて開拓したグレン・グールドは、草葉の陰でこれをどう見ているでしょうか。モグラには眩しすぎる光景かも(笑)。
バッハを演奏するピアニスト(の映像)を見るとき、鍵盤ではなく、足を見ましょう。(ダンパー)ペダルをどう使っているか。音源を聴くときも、それを意識しましょう。
彼女がバッハを弾くDVDを見ましたが、ペダルを踏んでいます。
グールドは、たぶん踏んでいない。そして、先日アンドラーシュ・シフの演奏がETVで放映されていましたが、彼もバッハでは踏んでいない。
ペダルを使わないバッハは、ある意味で超絶技巧だと思います。特にシフの演奏はそうは聞こえないので、凄い。
チェンバロだったら自然に減衰してできる音の切れ目、音と音との受け渡しを、すべて指でコントロールし再現しなくてはいけないのですから。テヌート・スタカートのテクニックの極致です。
でもペダルの使用が演奏の善し悪しや好みを決めるものではないです。たとえばバレンボイムの弾く平均率はとても好きですが、音が濁りそうな寸前までペダルを使っています。(彼こそノンペダル奏法は巧そうなんですけどね。)
ただピアニストはバッハを弾くとき、あるいは我々もそれを聴くとき、グールドの偉業を忘れないでほしいと思います。野茂のおかげで日本人がメジャーでプレイできるように、グールドがいたからピアノコンサートでバッハが弾けるのです。


