原子力ミニコラム
2007年04月20日
電力不祥事は「プルサーマル逃れ」
高レベル核廃棄物は,処分場が仮に決定しても,すぐに廃棄物を入れるわけではありません。およそ50年間冷却しないと熱くて入れられません。
「再処理」というのも,原発から出た使用済み燃料を(燃焼度によりますが)10年〜20年は冷やしてからでないとその行程に入れません。
プルサーマルで使った使用済プルトニウムに至っては,ウラン燃料の10倍冷えるのに時間がかかりますから,100〜200年冷やさなくてはいけません。
途方もない話ですが,実はこの“時間”が,官僚や政治家が責任逃れするのに都合がよいものなのです。
彼らは「地球温暖化」だとか「石油の枯渇」だとか,危機感をさんざん煽って,おいしいところを独占し,これが破局的な問題だということを知っていながら未来の人間に押しつけているのです。
もっとも,原子力のおいしいところは,核武装主義者とゼネコン以外にとっては,もうたいして残っていません。
六ヶ所プルトニウム工場の稼働は,核武装主義諸勢力と,これまでの核政策の失敗を認めたくない官僚たちの「利権」が噛み合ってしまったことによるものです。もっとも,主権を握っているのはアメリカですが。
電力会社は,実は「プルサーマル」なんてやりたくありません。
ひとつもメリットがないことを会社がやりたいはずがありません。
2002年“ひび割れ隠し”で東京電力のすべての原発が停止しました。
あれは内部告発によって発覚したと言われていますが,ウソだと思います。
内部告発が起こりうるなら,とっくに原発は存在していません。
あれは電力のボス=東電による「プルサーマル」への抵抗です。
そして,今年に入ってからの一連の「制御棒落下事故」発覚も,切り出したのは東電です。
「六ヶ所」が稼働し,いよいよ国がプルサーマルに本腰を入れるようになってきたところだからです。
一連の不祥事「発覚」はすべて計画的な事の運びなのだと思います。
東電の原子炉はすべて,制御棒落下事故が起こったタイプである,沸騰水型原子炉(BWR)です。
このタイプの原子炉での「プルサーマル」はほとんど無理です。(ここ参照)
無理なことを国に「やれ」と言われて怒っているのでしょう。
とにかく,官僚主導のこの国の舵取りをどうにかしなくてはいけません。
かつて官僚が独占した大きな大きな国がありました。
でも,たった1基の原子炉が爆発し,5年経って消えました。
2007年04月12日
プルトニウム工場の稼働とイカの不漁
本記事では,プルトニウム工場の廃液とイカの不漁を列記しましたが,筆者はこれらに因果関係があるとは考えておりません。ただ誤解を招く書き方ですので,ここにそのことを確認しておきたいと思います。
六ヶ所核再処理工場(プルトニウム工場)が昨年の3月31日に稼働を始め,その後,太平洋に放射性廃液を捨て始めてから,どういうわけか三陸沖の漁業は近年にない不漁に見舞われています。昨年の9月頃,岩手の漁師さんから,スルメイカがまるで捕れなくて四苦八苦しているという話を聞いていましたが,4月10日の東奥日報では,3月の八戸港の水揚げは昨年比60%減(!)だったと報じていました。
八戸港の水揚げ60%減/3月
プルトニウム工場からの放射性廃液の排出日と排出量,放射性物質の成分などは日本源燃のウェブサイトで発表されていますが,どういう理由なのか,ひと月ずつ発表して消してしまいます。
http://www.jnfl.co.jp/monitoring/discharge/content-cycle-date.html
昨年の4月から11月までは,岩手の海を守る会が記録しています。
http://homepage3.nifty.com/gatayann/Table0611.htm
僕はそれ以降のデータは記録してあります。
http://www014.upp.so-net.ne.jp/hamaoka/list/discharge.htm
2007年04月11日
「プルサーマル」はなぜダメか
いわゆるプルサーマルとは,ウラン燃料用の軽水炉で,プルトニウムを混ぜた燃料を使う原子力発電のことです。
この発電方法は,非常に危険なのですが,電力会社が言うように確かにヨーロッパなどではもう行われているのですから,それを言ってもあまり説得力は無いのだと思います。
プルサーマルがダメな理由は,これ一本で充分です。
使用済み燃料が冷めない
高木仁三郎さんが中心になって書いた『MOX総合評価』という本があります。難しいですが,たいへん貴重な情報が満載です。
その中に「使用済み燃料の発熱量」のグラフがあります。
ご覧の通り,ウラン燃料を取り出して10年後の温度が,MOX(プルトニウムを混ぜた燃料)を取り出して100年経った時点の温度とほとんどいっしょです。
使用済みプルトニウム燃料は,埋めるにも再処理するにも,冷めるのを待たなくてはいけません。冷却にはエネルギーが必要ですし,事故の危険が待っています。
フランスは,「約100 年間貯蔵し,その後に再処理するか再処理しないかの判断を下す」ことにしています。(2001年6月28日発表の国家評価委員会(CNE)の第7回レポートより)
「再処理」やプルサーマルに意味がないのも,高速増殖炉による「核サイクル」が実現不可能なのも,多くはこの理由によります。2007年04月05日
制御棒駆動装置はちゃんと点検修理できてるの?
ちょっと事故の中核的なことから離れたところで分かったことや思ったことを書きます。
まず,制御棒駆動装置というのは,原発のブレーキであり非常に重要な機構であるということです。
そして,非常に複雑な機構で,かつ微妙な調整が必要であるということ。
にもかかわらず作業員が普通に入る所としては,もっとも放射線が強い場所であるということです。
これはちゃんと点検できるのでしょうか?という素朴な疑問。
中国新聞の「被爆と人間」という特集には,浜岡原発2号機の制御棒駆動装置の写真が出ています。
中国新聞 被爆と人間 第3部 ある原発作業員の死
〔2〕原子炉の下で 身かがめ点検 調整
これは浜岡原発で働いていて,白血病のため二十九歳で亡くなった嶋橋伸之さんについての特集記事です。嶋橋さんは制御棒駆動装置部分で作業することが多かったのです。
この写真では作業員は黄色い服を着ていますが,以前は赤い服だったはずです。放射線の量にしたがって服の色を変えていたのですが,赤い服というのはあまりにも恐怖心を煽るということで,浜岡原発ではとりやめになったといういきさつがあります。
おそらく嶋橋さんは赤い服を着て作業していたことでしょう。
原発は一般的に重要な部位ほど核燃料に近く放射線が強くなる傾向があります。
そして,作業員の被爆量は上限が決められていますので,そういう部位ほどベテランの作業員が入れないのです。というか,原理的に「ベテラン」が存在しえない現場なのです。
この原発の抱える大きな矛盾を想像力を働かせて,少し考えてみてください。自分が作業員だったら,自分が現場監督だったら,自分が電力会社の社員だったら,下請けの社長だったら,自分がホームレスで,よい話に釣られて原発に連れてこられたら……。
参考拙記事:原子力ミニコラム 第39回
2007年04月02日
制御棒落下事故をめぐって
それにしても,停止中=定期検査中の原子炉が反応をし始めるというのは,非常に恐ろしいことです。
なぜなら安全を司る設備が修理中で機能しない可能性が高いからです。近年の定検は分単位のスケジュールで行われ一刻も早く終わらせようとしていますから,可能な限り同時に多数箇所を点検修理しています。
制御棒が抜け落ちるという事故は,世界でもあまり類例がないようで,多くの専門家も現実的には想定していなかったようです。
類例がないとは言っても,いま問題になっている沸騰水型原子炉(BWR)は,世界の原発の約2割でしかなく,そのうち約3分の1が日本のものです。日本は,アメリカ(34基)に次ぐBWR保有国です。
2005年の資料では世界の原発は434基,BWRは92基,日本のBWRは32基です。(ABWR含む)
日本以外の60基でなぜ同様の事故が,同様の頻度で起きていないのか,よくわかりません。
関連内部リンク:制御棒脱落事故関連
2007年03月15日
志賀1号 1999年 定検中に臨界事故
原子炉は18時から停止作業を開始し,明朝までには停止する予定です。
詳しいことは今後の情報を待ちますが,定検中の臨界ですから,作業員が被爆をしている可能性が高いと思います。
志賀原発は昨年の3月24日に2号機がいわゆる原発震災が発生する可能性があるため「運転差し止め」の判決を受けています。その後も稼働し続けましたが,7月にタービンの設計ミスによって現在まで停止しています。
これで志賀原発は全2基が予定外の停止をすることになりました。
*日本の原発一覧表*
BWRを持つ電力会社6社のうち3社がトラブル隠しをカミングアウトしました。
残るは中国電力,中部電力,日本原電です。
2007年02月22日
回収ウランをロシアで加工?
ウラン濃縮を露に委託へ、今夏合意目指す…政府など
原子炉の使用済み燃料には約1%のプルトニウムと約1%の「まだ使える」ウランが残っています。
ウランのほうを回収して使うにはコストがかかるので,六ヶ所村の再処理工場はプルトニウムの方のみ取り出しているのですが,日本は,以前に英仏に依頼していた再処理からすでに回収ウランが取り出されています。
これをロシアで燃料に加工してもらう,ということなのでしょう。
でも,回収ウランはバージンウランと違い,いろんなアイソトープを含んでいます。
これらはバージンウランと違った働き(主にマイナス)をするので,特殊な燃料ということになり,利用には経験が必要でしょう。
また放射線の質も異なり量も多くなるので,作業員の被爆は多くなるでしょう。
読売記事は回収ウランの「濃縮」と書いていますが,その厄介な234-U,236-Uなどのアイソトープを「濃縮」で取り除くことはできません。
回収ウランはプルトニウムと同様,使い道が無く困っているだけで,決してコストに見合うものではないでしょう。
ましてやロシアに委託する,というのは,かなりの“賭け”じゃないでしょうか? 「核燃料の調達コストの大幅削減」というのは甘いんじゃないかな?
ところで,記事では,日本では「国内での(ウラン)濃縮はほとんど行っていない」と書いてますが,六ヶ所でしっかりやってますよ。(参照)でも,装置が故障続きでノルマをこなしてないだけです。
2007年02月21日
青森にはあと2つ原発ができます
東奥日報で「大間原発の着工を数ヶ月延期」との報道があり,青森にあと2基作られる原発のことに触れておこうと思いました。
2基とは,東京電力東通1号とJ-powerの大間1号です。どちらもABWR(改良沸騰水型)です。
「計画」とは言っても,かなり進んでいるので,ちょっとやそっとじゃ頓挫しないでしょう。
東通は東北電力が1号機を営業していますが,となりに東京電力が増設する予定なのです。(東京電力ですよ!)
大間原発はABWRですが,燃料は世界に例を見ない「フルMOX」(=すべてプルトニウム)です。
「プルサーマル」というのは,通常のウラン燃料にMOX(プルトニウム燃料)を約1/3混ぜます。出力にするとウランとプルトニウムが約半分ずつ受け持つかたちになります。
BWR(沸騰水型)は「プルサーマル」でさえ,世界で1カ所しか行われていません(参照)。これはBWRがそもそも核反応の制御が非常に難しいタイプの原子炉であるという理由があるようです。
にもかかわらずBWRで「フルMOX」を計画するという,この異様な自信はどこから来るのでしょう?
大間原発の計画は古く,しかも妙に曰く付きです。
最初はキャンドゥを作る予定でした。100円ショップではありません。
カナダ製重水炉CANDUです。
これは運転中に燃料交換ができるという,軽水炉ではちょっと考えられないしくみのもので,低照射燃料を取り出すことが容易です。つまり原爆用プルトニウム製造にとても都合のよい原子炉なのです。
インドはこれで原爆を作り,核実験に成功しました。1974年です。
その影響で大間キャンドゥー計画は頓挫しました。
その後ATR(新型転換炉)を導入する計画などがありましたが,けっきょくはフルMOXのABWRで落ち着きました。
ところで,一度青森県大間町,そして東通(ひがしどおり)村の位置を地図で調べてみてください。
なぜ,こんなところに原発をあと2つも作らなければいけないのでしょう?
送電線はいったい何キロひくのでしょう?
2007年02月14日
「情報公開」という情報隠蔽
東京電力は,2002年に原子炉の「ひび割れ隠し」が発覚し,すべての原発を停止させたことは,みんなよく覚えているでしょう。
あのとき猛省のポーズを見せておきながら,なおも隠され続けていた199件もの偽装工作が最近発覚したのです。
緊急冷却装置の故障まで隠していたのですから,非常に悪質です。普通の会社なら倒産するでしょう?
ところで東京電力は大手の週刊誌などに毎度つまらない広告を出しています。これも広告料による批判封じです。
以前,週刊紙に掲載されていた広告記事には,「徹底した情報公開で住民と共生」などと書かれていて,作業員が作業中に足を怪我したことまでも公表しているのだ,と,得意げに語っています。じっさい東京電力のサイトには,怪我どころじゃなく,放射能管理区域内でタバコの吸い殻が発見されました,とか,ガムが見つかりました,なんてことまで公表されています。(2006年10月)中学の便所じゃあるまいし。。。
柏崎刈羽原子力発電所 不適合の公表
http://www.tepco.co.jp/nu/kk-np/incomp/index-j.html
たばこやガムを「公表」しておきながら,緊急冷却用ポンプの故障を隠していたのです!!
2006年12月05日
原発は「海あたため装置」
東電、福島第一原発でもデータ改ざん 20年前からか
先日,東京電力柏崎刈羽原発の温排水の温度が改ざんされていたことがニュースになった(ほとんどの人は興味ないでしょうけど)ばかりですが,F−1(福島第一)でも改ざんしていたということですね。
「排水側の水温の平均値を1度低くするデータ操作が見つかった」そうです。
わずか1℃でしょ?と思われるかもしれませんが,水は物質の中でいちばん比熱(=もののあたたまり方の基準)が大きく,水の1℃というのはカロリーにすると相当な量になります。
しかも発電所の温排水というのは量がべらぼ〜に多いのです。
先日改ざんのみつかった柏崎刈羽原発は日本最大の原発基地ですから,フル稼働すると温排水の量は信濃川の平均流量を軽く超えます。
福島第一の場合,だいたい北上川の平均流量に近いです。
それほどの温排水(海水温+約6〜7℃)が原発からは出ています。これは原子炉から発生するエネルギーの約7割です。原発はたった3割しか電力に変換していないのです。
原発が「海あたため装置」と言われる所以です。
大型火力の熱効率もそれほど変わりませんが,火力が出力調節できるのに対して,原発は基本的には常に100%出力しか出せません。
最新の天然ガスコンバインドサイクル発電は熱効率は6割を超えるものがあります。 続きを読む



